公演其ノ四「ムゲンノゲンム」
よしこ公演其の四「ムゲンノゲンム」は1996年5月、中三AUNホールにて上演されました。
芝居に映像を取り入れた作品。窓の向こうのかこ(映像)と病室の千里(実物)が会話をするという演出を試みた作品でした。
* あらすじ*
ある病院の入院患者達。その中、頭に包帯を巻いたGという1人の患者がいる。
Gはいつも窓の外を見ている。窓の外では、2人の少女が会話をしている。
かこ 「あたし、おじいちゃん欲しいなあ。」
千里 「もしもおじいちゃんがいたら、かこちゃん、他の誰よりもおじいちゃん
が好きになるかも知れないね。あたしね、早く年をとってね、かこち
ゃんのおじいちゃんになるよ。」
窓の外の風景は、昔の記憶の風景。
転校してしまったかこちゃんがくれた煎餅を、Gは食べられず大切に持っている。
Dr 「佐倉千里、女性、16歳の事例。食べ物を飲む、かじる、なめる、口
に入れる、すべての事が出来なくなり、日を追う事に言動も変化し、自
分を全く別の人間であると思い込んでいる。」
どんどん狂って行き、何もかも分からなくなることを恐れたGは、
G 「食べたらそれで、おしまいなんじゃよ。」
そう言って、千里に煎餅を渡した。
G 「さよなら、昔のわし。」
千里 「さよなら、これからのあたし。」
Gが千里に別れを告げた時、病院は真っ赤な炎に包まれる。炎の中から現れるかこ。
かこ 「行こう。迎えに来たよ。」
かこによって頭の包帯をほどかれ、少しずつ千里に戻ってゆくG。
千里 「あたし、あんたのおじいちゃんになりたかったんだよ。」
すべての包帯がほどかれた時、かこの前から千里の姿は消えていた。
そして再び、頭に包帯をまいた千里が現れる。
千里 「さっきまで、手の中にあったはずのそれはね、今はもうおてんとさんの
所まで行っちゃったよ。あっという間だね。奴もきっと寂しいんじゃよ。
だから時々は胸の中空っぽにして、ちょっとだけそいつを入れてやって
くれんじゃろか。な、かっこさん・・。」
くり返される現実。ここからまたムゲンノゲンムが始る。