公演其ノ六「今宵満月」
よしこ公演其の六「今宵満月」は1997年7月、盛岡劇場にて上演されました。
100万回生きた猫をよしこ風にアレンジし、結末の違う2バージョンで公演。
月、猫、バラ等、特に女性に好まれるアイテムやキーワードが満載で、再演希望の一番多い作品でした。
*あらすじ*
月が好きな女は猫を飼っていた。
その猫はその女が大好きだったのに、そんな猫を残して女は死んでしまった。
先生 「泣くなよ。お前きっと泣くよ。」
猫 「鳴かないよ。」
そして、鳴かない猫は女に会う為に何回も何回も生まれかわり100万回目に生まれ変わった時、体と心が2つに分かれてしまった。
1つは(体)少女に、1つは(心)猫に。
生まれ変わった女は先生になり、宇宙船に乗っていた。乗組員は、いつもくっついているAとB。そして少女と猫。
船は月を目指していた。猫は少女にしか見えない。そして先生は少女があの猫であることには気づかない。
でも少女と猫はこの先生があの大好きな人であることに気づいていた。
船が月に到着する時がきた。しかし船は月にぶつかって壊れてしまった。
なにもかもが終わる。最後にお互いを抱きしめるAとB。
A 「夢のむこうでまた会えるといいね。」
B 「あんたに会えて良かった。おやすみ。」
(少女バージョン)
最後に猫は少女に心をあげることにした。
不完全な2つが1つになるためには自分が消えてなくなることにした。
猫 「いいんだよ、あの人にあたしは見えないんだ。」
少女 「あたしは寂しくないよ。あんたと一緒なんだから。」
そして先生は少女があの時の猫だと気づく。少女を抱きしめる先生。
でも少女はその瞬間、自分の一番大切なものに気づく。
少女 「いつもあたしを抱きしめてくれたのは、この腕じゃない。」
そしてゆっくりと先生の首を締めた。
少女 「いつもあたしを抱きしめてくれたのは、この腕だったよ。おいで、ここだよ。」
少女はいつまでも、いつまでも自分を抱きしめた。
(猫バージョン)
最後に少女は猫に体をあげることにした。
先生のことを想っている猫に体をあげようと思ったからだ。
少女 「あたしの体をあげるよ。」
猫 「あんたはどっかに行っちゃうの。」
少女 「今度はあの人に抱きしめてもらうんだよ。」
約束を守って猫は先生に会う。そして先生はそんな猫を抱きしめた。
先生 「これが、今お前が触れているのが私だよ。」
先生はそう言って、また猫を残して死んでしまった。
猫 「あたしは二度と生まれてなんかこない。
だからもう永遠に鳴かない泣けない。
これは、この猫はそんな猫です。」
猫はゆっくりと自分の喉を引き裂き、崩れていった。